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「学びの共同体」の東南アジアにおける実践

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子どもたちが学校の授業の中で互いに教え合い、学び合う「学びの共同体」。国内各地で取り組んでいる学校からは、人間力が涵養され、結果として学力向上につながっているとの報告が相次いでいます。


私はこれまでも福岡県議会の所属会派の皆さんとともに先進地を視察。宮崎県綾町(2014年2月11日付ブログ 参照)や沖縄県国頭村(同2月18日付ブログ 参照)、福岡県飯塚市(同4月18日付ブログ 参照)などの取り組みから高い教育効果があると実感し、県教育委員会にその意義を提起しています。


さらに、この取り組みの効果は海外でも表れています。20日午後、シンガポールの南洋理工大学・国立教育学院(National Institute of Edugation=NIE)の齊藤英介・助教授に話を聞かせていただきました。


シンガポール1


齊藤氏は2006年以降、東南アジアの学校改革に取り組んできています。ベトナム、インドネシア、シンガポールの学校現場で、その国の教育の実情を踏まえ、教師たちと話し合いながら「学びの共同体」の導入を推進。大きな成果も上がっています。


これまでの視察でも目の当たりにしてきましたが、齊藤氏も指摘した「学びの共同体」の特長は、子どもの成績を上げようと意識をしていなくとも、結果として学力が向上していること。子ども同士が授業で顔を寄せ合い、分からないことは互いに聞き合い、教え合うことで、自然とお互いへの信頼感が生まれ、いじめや不登校は減少していく。話し合うことで互いの理解が深まり、結果として学力も向上していきます。


だからこそ、先生の役割は、一人一人の子どもの様子をしっかりと見ることだといいます。そして、子どもたちが「(問題が)分からない。でも、何とかしたい」という気持ちを抱くことができるよう、先生が授業の中で適切に導いていくことが最も重要です。一人ぼっちで悩んでいる子どもがいたら、近くの友だちと話ができるよう、先生が自然な形で間に入ってサポートします。「(子どもたち)みんなが(互いに)聞ける、みんなが受け止めてもらえる」(齊藤氏)環境をつくります。とても民主的な取り組みです。


シンガポール5


齊藤氏は、東南アジアで「すべての子どもの学びを保障する」ための取り組みを展開しています。どの小中学校でも、「教師が一方的に子どもに教え込まなければならない」という意識を転換することが、まずは困難だったといいます。それでも、先生同士が自分の学校の子どもたちについて語り合い、信頼を醸成する。校長先生も一つ一つの教室を回って子どもたちの様子をしっかりと見る。これらの実践を促し、「子どもを大事にしていくという原点」(齊藤氏)を意識してもらえれば、教室、学校の雰囲気は変化し、「学びの共同体」による授業改革で学力が向上していきました。


実践からわずか1~2年で▽ベトナムの小学校では地域で最下位の25位から6位▽同国の他の小学校でも地域で最下位の38位から7位▽インドネシアの高校では45校中35位が4位▽インドネシアの中学校では65校中55位が5位――に上昇するといった成果が出たといいます。なお、これらは日本政府のODAのプロジェクトで行われました。


シンガポール2


また、シンガポールはエリート教育を徹底した教育制度になっており、教育段階の節目節目で競争試験が実施されています。齊藤氏や現地の方によると、例えば小学校卒業時点で試験があり、その後のコースが明確に分けられていくなど、一度つまずくとその後の人生に影響していくといいます。それでも、齊藤氏は、エリートだろうとそうでなかろうと、どんなコースの子どもたちの授業でも「学びの共同体」を実践することが、子どもたちの主体的な気付きとさらなる学力向上に有効であることを、自ら取り組んだ授業の映像などから、とても分かりやすく紹介してくださいました。


シンガポール6
シンガポールの教育制度の図


また、齊藤氏は「シンガポールは発展しているように見えながら、その陰で泣いている貧困層の子どもたちもいる」といいます。「貧困の連鎖」が子どもの学力に影響を与えることについては、日本でも同じ指摘がなされ、私も県議会で取り組みの強化を提起した経緯もあります(2012年9月26日付ブログ 参照)。国内外を問わず、経済格差が学力格差につながる現状の打破は、重要な課題だとあらためて認識できました。一方、齊藤氏は「シンガポールの先生たちに、先生を目指した理由を問うと、多くが『貧しい子どもたちとの出会い』と答える」とも教えてくださいました。


最後に、学校教育の現場における電子黒板などの情報通信機器を活用した「ICT(Information and Communication Technology)」の活用についても言及がありました。単に情報通信機器を使えばいい話ではなく、これらをどのように使い、教育現場の「対話的活動」につなげるかが重要との指摘には、強く共感しました。なお、ICTに関しては、福岡県大野城市の中学校の視察を報告した2013年11月20日付ブログ もご参照ください。


シンガポール4
齊藤英介・シンガポール国立教育学院助教授と


   ◇


所属会派として、教育問題や観光政策を考えるため、シンガポールを視察しました。19日夕に現地に入り、20、21両日に調査を実施。22日の早朝、福岡に帰国しました。短期間の日程でしたが、9月定例会以降の知事らへの提起につながる有意義な視察となりました。次回以降も報告します。


シンガポール3

視察メンバーで齊藤氏を囲んで


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