インドネシア・ジャカルタへ。
今年、東南アジア10カ国で構成するASEAN経済共同体(AEC)が創設され、総人口6億人の巨大な統合市場が生まれます。アジアに開かれた九州・福岡にとっても極めて重要な契機となります。
そこで、福岡県議会の民主党・県政クラブとして7月27日~31日、現地を視察・調査し、8月1日朝に帰国しました。
訪問の初めに、ASEAN本部や国際貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所で現状と課題、展望について聞き取りました。特に、ASEAN本部では2015年の経済統合の先にあるビジョンにも話が及び、中央銀行の設立を検討していることや国際的な投資拡大への高い期待なども示されました。また、「日本は貿易パートナーとして最も強い。経済だけでなく、技術などの幅広い分野について、日本政府だけでなく、福岡県からの協力もお願いしたい」(Ho Quang Trung氏)との期待が述べられました。
さらに、現地の日本人弁護士・会計士の方々からは、日本企業進出にあたっての法務上の課題と対策などについて説明を受けました。
Ho Quang Trung氏(Director)との意見交換=ASEAN本部
ASEAN本部正面の大型ポスターには2015年への期待が込められている
さて、インドネシアは人口2億5000万人と世界第4位の大国であり、国土は1万3000を超える島々で構成されます。現在、特に注目されているのがその経済成長です。1人当たりの国民所得(GDP)が3000ドルを超えると、自動車が大衆化する「モータリゼーション」が急速に進むとされている中、2014年には3531ドルに上っており、自動車市場の規模はASEAN最大とされます。
そこで、ダイハツ(PT ASTRA DAIHATSU MOTOR)のカラワン工場を訪ねました。なお、ダイハツは福岡県久留米市の工場でも軽自動車用エンジンを生産しており、私は既に2年前に視察をしています。(2013年9月4日付ブログ 参照)
カラワン工場では、大上誠司工場長らから説明を受けました。同社はインドネシアのコンパクトカー市場でナンバーワンとなること、日本品質基準を実現する海外生産の主要拠点となることをビジョンとして掲げており、生産車の多くはインドネシア国内向けですが(「Just Fit for Indonesia」という言葉が印象的でした)、輸出向けも15%に上ります。アジアだけでなく、アフリカや中南米など世界45カ国に輸出しています。
カラワン工場はスルヤチプタ工業団地に位置し、2012年10月に操業開始。「開発から生産まで一体となった工場は今のところここだけ」といいます。
工場の生産ラインでは、品質の安定のための様々な取り組みが進められており、久留米工場の取り組みも踏まえられていました。
そして、この工場でも活躍していたのが、産業用ロボットの世界トップメーカー・安川電機(北九州市)のロボットです。安川電機はインドネシアにおける自動車生産が右肩上がりで生産のためのロボットのニーズが増加していくことを見越し、2008年に現地法人の立ち上げに踏み切り、販売とメンテナンスに取り組んできています。
加えて、昨年の2014年10月には拡販のためのロボットセンターをオープン。今回の視察ではこのセンターも訪ね、片瀬博治・安川電機インドネシア社長らから説明を受けました。
センターには、溶接や溶接以外のハンドリング、塗装などのロボットが約10体展示されています。インドネシアでは安川電機のロボットが約1800体稼働しており、今後、さらなる増加に対応していく構えです。ちなみに、世界の四大ロボットメーカーのうち、こうした展示をしているのは安川電機のみといいます。
また、今回の視察・調査では、日本政府とインドネシア政府の間の経済連携協定(EPA)に基づく、看護師や介護福祉士の日本受け入れについて、その実態を把握することも目的のひとつに置きました。そこで、ジョグジャカルタにある看護大学を訪ね、学校の財団理事長や学校長、先生方、そして来日経験のある元学生さんらと意見交換をさせていただきました。
日本では高齢化が進む中、看護・介護分野での人材不足が深刻化。EPAによる受け入れは打開策のひとつとして打ち出されましたが、日本の国家試験が外国人にはかなりの難関とされています。この日も関西の老人ホームで3年間働いて学びながらも国家試験には不合格となり、インドネシアに帰国した元学生さんがいらっしゃいました。やはり、日本語での受験が最大の問題だったといいます。この学校は卒業生たちを日本に送っていますが、多くが不合格。さらに、国家試験に合格しながらインドネシアに帰国した方々もいるといい、ここにも制度上の問題があると感じました。
世界遺産の現況把握にも取り組みました。いずれも1991年に登録された仏教遺跡の「ボロブドゥール寺院遺跡群」と、ヒンドゥー教遺跡の「プランバナン寺院遺跡群」。
折しも、インドネシア滞在中、「神宿る島 宗像・沖ノ島と関連遺産群」がユネスコの世界文化遺産の推薦候補になったという朗報が舞い込みました。福岡県にとっても、近隣地域の地元・古賀市にとっても大変有意義なことです。しっかりと今後の活動につなげていきたいと思います。
今回も大変貴重な機会をいただきました。しっかりと今後の政治活動に生かしていきます。