東日本大震災と福島第1原発事故を経験した私たちの社会にとって、再生可能エネルギーの普及促進は極めて重要です。
私も10月の決算特別委員会では福岡県の事業を検証し、さらなる取り組みを求めたところです。2015年10月31日付ブログ に詳報していますので、ご参照いただけると幸いです。
県のエネルギー政策の効果を検証した決算特別委員会=10月27日
地方分権改革の推進と九州の成長戦略を考える超党派の「九州の自立を考える会」(藏内勇夫会長)は、福岡県議会が中心となって作り上げ、知事らに昨年提出した「九州の成長戦略に係る政策提言」の中で、当然、エネルギー政策にも言及しています。
ここでは再生可能エネルギーの普及だけでなく、LNG(液化天然ガス)による火力発電の可能性の大きさを指摘。具体的には、「福岡県エネルギー政策研究会では、実現可能性が高く、効率的で環境面でも優れた発電方式としてLNGによる火力発電の推進やコージェネレーションの利用を提唱しているところである。したがって、福岡県は、本研究会の成果として県が果たすべき役割を実証するとともに、九州全体における電力の安定供給に寄与するため、責任を持って早急にその実現を図るべきである」と提言しています。
近年の電力供給の実情を踏まえると、安定供給にとってLNGは重要なポイントです。今回のカナダ・バンクーバー視察では、エネルギー政策のさらなる展開を考えるため、シェールガスによるLNGの初輸出を目指してプロジェクトを本格化しているカナダ三菱商事を訪問。稲岡俊哉社長から話を聞かせていただきました。
同社の説明によると、シェールガスは一般の天然ガス(在来型天然ガス)と成分や由来は同じですが、一般のものが根元岩からにじみ出たガスが地層の下で溜まっているガス田から採掘するものであるのに対し、シェールガスは根元岩であるシェール(頁岩)の中に閉じ込められたままのものをいいます。
三菱商事は先駆的にシェールガスに着目し、北米で事業を進めてきました。カナダは天然ガスの生産量が世界5位であるなど世界有数のエネルギー資源国。そして、天然資源の所有権や規制権限が基本的に州政府にあります。今回訪ねたバンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州も天然資源が豊富で、新たにシェールガス開発による州経済発展が期待されているといい、現在のChristy Clark知事も特に力を注いでいます。
こうした背景から、三菱商事は2014年5月、シェル、韓国や中国の公社等との共同開発計画「LNGカナダ」の合弁契約事業を締結し、シェールガスの初輸出を目指してプロジェクトの開発を本格化。「カナダの豊富なシェールガスを、日本を中心とした市場にLNGとして長期安定供給していく」(同社)との考えで事業を進めています。なお、2015年現在、カナダ西海岸からアジア向け輸出を念頭に置いたLNGプロジェクトは20件に上り、日本企業が三菱商事を含め5件のプロジェクトに参画しているといいます。
今回の調査では、事業の背景や課題などを詳しく聞かせていただき、日本において長期にエネルギーを安定供給していくため、資源を多様化していくことの重要性と、その実現のための取り組みを推進する必要性をあらためて認識することができました。
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若者が他国で起業する現実を知っておくことも大切です。九州、福岡県としても海外から若者を呼び込むとともに、こうした海外の若者と日本の若者が接点を持つ環境づくりを推進していくことで、企業の国際的なネットワーク形成に将来的に寄与していくことが期待されます。
先述の「九州の成長戦略に係る政策提言」でも、「敗者復活の社会的風土を形成し、起業家精神にあふれた人材を輩出するとともに、中小企業が優秀な人材を獲得できるようにするためには若年層からの教育が重要である。また、優れた能力とともに高い目的意識や起業意欲を有する海外の若者を留学生、研修生等として呼び込み、大学等の場でわが国の若者と継続的に交流する機会をつくれば、わが国の若者の意識改革と起業意欲の喚起に寄与するだけでなく、さらに、帰国した海外の若者が勤務し、又は操業する国外企業とわが国の企業のネットワークづくりにつながることも期待できる」としています。
こうした中、バンクーバーは世界の中でも起業しやすい都市として広く知られており、今回は福岡県出身で、現地で広告やビジネスサポートをの事業を行っている「CK Marketing Solutions Inc.」社長の長勝博さんから、起業までのご自身の歩みや思いを聞かせていただきました。
長さんは「日本、福岡と北米をつなぎたい」との意志を持って活動。バンクーバー日系ビジネス協会の理事やバンクーバー福岡県人会の役員も務めてます。久留米高専卒業後にエンジニアや大手自動車会社の海外プロジェクトの営業担当といった生活を経て、「いつか米国(の企業)と仕事をしたい」との思いで単身、バンクーバーに移住。それまでの経験を生かし、常に自らの数年後の姿をイメージし、積極的に行動することが事業展開につながっているといいます。現在は福岡市と連携しての事業も展開し、当初考えていた米国との仕事も実現。今後、日本でビジネスのプロデュースなどをサポートするコンサルタントなどをしていきたいとのことでした。
主体的、積極的に行動すること、目標と計画を立て実行していくことの大切さをあらためて学ばせていただきました。
近年、「九州産ワイン」に注目が集まり、需要も増えています。さらなる販路拡大と観光振興の可能性を探るため、米国シアトル近郊の「Columbia Winery」も訪ねました。
1962年、ワシントン大学の教授とその友人らが共同で設立。フランスのシャンパーニュ地方と同じくらいの緯度であることなどの可能性を信じて事業を始めたとのこと。
ワシントン州でも最も歴史あるワイナリーで、店内にはワインバーやパーティルームなどを設置。ブドウの木が植えられた地層の違いも「断面」が展示されており、学ぶことができます。
米国のワインは生産の多くがカリフォルニアですが、現在、ワシントンはこれに続く全米2位。特に近年成長が著しく、30年前には2ケタ台だったワイナリーの数が、現在は900近くまでに増えています。
Columbia Wineryの説明では、当初は大学や地域社会とのつながり、人脈を生かしながら口コミで評判が広がっていきました。ここ15年ほどは、「食事にあわせてワインを飲む習慣が米国民の間に浸透し、『健康志向』『ヘルシーブーム』が高まってきた」(ワイナリー従業員)ことに乗じ、さらに観光客をつかむことに成功しています。
結婚式会場としても人気が高く、ある米誌の調査では4年連続でランキング1位に。日本で有名な「地球の歩き方」にも、この地域が「シアトル近郊のワイン産地」として掲載されるなど国内外に認知度が高まっていることも重要なポイントです。
なお、こうしたことに関連して、「九州の成長戦略に係る政策提言」では、「農林水産業の6次産業化を効果的に進めるためには、農林水産系試験研究機関と商工系試験研究機関の連携及びこれらと民間の企業・研究機関との連携が必要である」「観光振興の目的を実現するためには、利便性の高いインフラの整備、魅力ある環境と景観の形成、魅力ある食と特産品(その土地ならではの農林水産物や購買意欲を喚起する特色ある工芸品等)の開発等によって、いわばその地域の総合力を向上させ、その魅力を国内外に発信することが必要と考えられる」と提言しています。
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紅葉。公務のスケジュールの合間、こうした瞬間が心を癒してくれますね。
バンクーバー・シアトル視察から20日夕方に帰国し、いつものように迅速な報告が肝要と考え、今回と前回のブログの取りまとめや更新に勤しみました。副委員長を務める広域行政推進対策調査特別委員会としての活動はもちろん、今後の政治活動に学んだことを生かしていきます。